マレーグマは東南アジアの熱帯雨林に住む世界最小のクマ

英名:Sun Bear

学名:Helarctos malayanus

レッドリスト:危急種(Vulnerable)

体長:120 cm 〜 150 cm

体重:20 kg 〜 70 kg

生息地:東南アジアの熱帯雨林

食性:雑食

行動:昼行性(薄明薄暮性)

寿命:約30年

胸の黄色い模様が特徴的で、日の出のように見えることから英名はSun Bear。胸の模様の大きさ、形、色などは一頭ずつユニークです。

 

熱帯雨林に生息するため毛は短く身体も細め、冬眠もしません。クマ科の中で最も樹上性が強く、高さ30mにもなる木に登り、木の上で寝たり、果実や無脊椎動物を食べたりします。

 

約25cmの長い舌が特徴的で、これを使って起用に蜂の巣からハチミツを舐めていきます。そのためマレー語では Beruang=クマ Madu=ハチミツと呼ばれています。



マレーグマへの脅威

マレーグマは過去30年間で30%以上が減少しており、IUCNのレッドリストでは危急種(VU)に指定されています。野生のマレーグマの正確な個体数は把握されていませんが、オランウータンより少ないと考えられています。

マレーグマの減少の主な原因は残念ながら人為的な影響です。

1. 生息地の減少

ボルネオ島の熱帯雨林は違法な伐採やプランテーション(大規模農場)への転換で年間数千㎢のペースで失くなっています。プランテーションで主に栽培されるのはアブラヤシ、パーム油の原材料で、日本にも輸出されています。パーム油は「植物油」として流通しており、我々も日常的に目にするパンやカップラーメンなどの食品から洗剤にまで使用されています。

2. 密猟

マレーグマの胆嚢は漢方薬の原材料として高値で取引されるため、それを目的とした密猟が絶えません。中国やベトナムでは胆汁を搾取するクマ牧場が未だ存在します。マレーグマは保護種であり殺害することは禁止されていますが、多くの国と地域では管理が行き届いていないのが現状です。

3. 違法飼育とペット取引

マレーグマはサイズも小さく可愛らしいからか、子グマのペットとしての需要が非常に高いです。母グマが殺害され、子グマが狭いケージで違法飼育されるケースが頻発しており、BSBCCのマレーグマたちもみんな違法飼育から保護されてきた子グマたちです。



なぜ保護するのか?

可愛いだけじゃない。

マレーグマは他の動植物に様々な恩恵をもたらす、熱帯雨林の生態系には欠かせない存在です。

 

マレーグマがもし絶滅してしまったら生態系のバランスが崩れると考えられています。

1. 種子を運ぶ

マレーグマは果実を食べる時、種を噛み砕かずそのまま飲み込むことができます。そして糞として別の場所に排出されるため、種を新しい場所へ運ぶ「種子散布者」として重要な役割を担っています。

2. 森の農家

マレーグマはよく鋭く長い爪で土を掘り土壌中の生物を探しますが、これには畑を耕すのと同じ作用が。土壌中の養分や微生物を循環して土と木の健康を促進してくれます。

3. 森の大工

鋭い爪で木に穴を開け、中の昆虫や蜜を食べることもあります。この穴は樹洞となり、後にムササビやサイチョウなどが巣として利用します。

4. シロアリ駆除隊

雑食性のマレーグマですが、シロアリは特に大好物!シロアリには生きた木を食べ腐らせてしまう種もいます。マレーグマはそんなシロアリをたくさん食べ数を抑えることで、樹々の健康を守ってくれます。